【飲食店・宿の経営者必見】事業を「数字で語る」ってどういうこと?そのメリットとデメリット

皆さんは、ご自身の事業について「数字」を使ってお話しされていますか?

「法人の役員」「個人事業主」「大きな企業のリーダー」など、どのような立場や規模であっても、自身が関わっている事業の状態を「数字で語れる」ことは非常に重要です。

しかし、
「数字で語るのが大事なのは分かっているけれど、なんだか難しそう」
「現場が回っていればそれでいいのでは?」と
感じる方も多いのではないでしょうか。

このブログ記事では、特に飲食店や宿泊業(ペンション・旅館)の身近な具体例を交えながら、そもそも「数字で語る」とはどういうことなのか、なぜ重要なのか、その理由とメリット・デメリットを深堀してみたいと思います。

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自社の置かれている状況を「数字で語る」とは、一言で言えば「経営者(個人事業主でも法人役員でも)の『感覚』や『経験』という目に見えないものを、誰にでも伝わる『共通言語』に翻訳すること」です。

事業の現場は、毎日がとてもダイナミックに動いています。

「今日はお客さんがたくさん来て忙しかった」
「今週はなんだか静かだったな」
といった肌感覚は、現場で仕事をしている経営者や事業主にとって非常に大切なセンサーです。

しかし、この「感覚」だけに頼っていると、自社の状況を正確に把握することができません。

飲食店・宿泊業で本当によくある「感覚のズレ」

早速、具体的な例として、飲食店や宿泊業(ペンション・旅館)の場合で考察してみたいと思います。

飲食店のケース

「毎日お店が満席で、目が回るほど忙しい!きっと今月は大儲けだ」と喜んでいた。

しかし、いざ月末に帳簿をつけてみると、手元にほとんどお金が残っていなかった。

実は、単価の低いメニューばかりが注文され、原材料費の高騰やアルバイトの残業代(人件費)が膨らんだ結果、「忙しいのに微々たる儲け」になってしまいます。

宿泊業(ペンション・旅館)のケース

「今月は客室の稼働率が90%を超えた!大成功だ!」と喜んでいた。

しかし、フタを開けてみると、割引キャンペーンを使いすぎたために客単価が下がってしまった。

さらに、リネンのクリーニング代や高騰した食材などの変動費がかさんで、利益は先月より減っていた。

現場の感覚と数字のズレ

このように、経営者の「忙しい」「調子が良い」という主観的な感覚と、実際の「会社にお金が残っているか」という客観的な現実は、しばしば大きくズレてしまいます。

このズレ(ギャップ)を無くし、事業の本当の健康状態(財務内容)を正しく把握するために欠かせないのが「数字」というモノサシです。

「数字で語る」ことは、いわば事業にとっての「定期的な健康診断」や「レントゲン写真」のような役割を果たします。

この重要性を踏まえた上で、数字を事業(仕事)に取り入れる具体的な「3つのメリット」をさらに詳しく見ていきます。

数字を事業に役立てることは、決して冷徹に数字だけを追いかけることではありません。

むしろ、長年の「勘」や、日々お客様と接する中で磨かれた「経営者としての鋭い感覚」を、揺るぎない自信(確信)へと変えていくために必要なプロセスなんです。

数字という道標(しるべ)を手に入れることで、感覚頼りの経営から脱却し、「ブレない迅速な決断」「スタッフとのスムーズな目標(あるいは情報)共有」そして「不安を安心に変える未来予測」の3つが手に入ります。

日々の忙しさに追われがちな事業運営が、数字によってどのように安定し、持続可能なものに変わっていくのか、その具体的な効果を紐解いていきます。

① 客観的な意思決定ができる(ブレない判断)

最初は誰でも身に付いていないことを習得するには、時間と根気が必要です。

「数字で語る」という事も、御多分に漏れず時間と根気が必要になってきます。

しかし、事業を「数字で語る」ようになると、「感覚」や「なんとなくの勘」ではなく、誰もが納得できる客観的なデータに基づいて、自信を持って判断を下せるようになってきます。

客観的なデータであり、自分で操作(あるいは加工)した数字ではないため、自分以外の人(親族やスタッフ)に対しても説明できます。

【飲食店の具体例】

「新メニューの『地魚のカルパッチョ』が、最近なんだか人気な気がする!」という感覚だけで仕入れを増やすのは、売れ残るリスクがあって少し怖いですよね。

しかし、「注文データを見ると、先月比でカルパッチョの注文率が30%増えている」という数字があればどうでしょうか?

食材をロス(廃棄)することなく、必要な仕入の量を予測して、自信を持って適切な量を仕入れることができるようになってきます。

② 経営状態が可視化され、目標を共有しやすい

事業の「健康状態(貸借・損益の状態)」が数字として見えるようになるため、現在の経営状況を把握できるようになります。

そのため、スタッフに対する指示の出し方や目標の共有ができるため、自分を含めたスタッフ全員が同じ方向を向いて改善に取り組めるようになります。

【宿泊業(ペンション・旅館)の具体例】

スタッフに「とにかくおもてなしを頑張って、リピーターを増やそう!」と声をかけるだけでは、具体的に何をすればいいか迷ってしまいます。

しかし、「今月はリピート率(再宿泊率)を20%にしよう。そのために、チェックアウト時に次回予約の案内チラシを全員に笑顔で手渡そう」と具体的な数字(目標)を示すことができます。

つまり、スタッフのやるべき行動がクリアになり、達成できたかどうかも具体的な数字で、一目で分かるようになります。

③ 精密な将来の予測が立てられる

過去のデータを理解し、数字と現場を一致させることを積み重ね続けると、今後の資金繰りや事業計画をより正確に予測できるようになります。

過去を振り返りながら、今どんなことを事業として力を入れて行けばよいかということが洗練されてきます。

【宿泊業(ペンション・旅館)の具体例】

過去3年間の宿泊予約データを分析すると、「毎年11月の秋冬シーズンは満室になるが、12月中旬は極端に予約が落ち込む」という明確な傾向が見えてきたとします。

これが分かっていれば、あらかじめ12月に「冬の味覚ゆったりプラン」といった特別キャンペーンを企画(料理に特化した企画で、値引きプランでありません)して集客を試みることができます。

また、11月の売上から資金をプールしておき、12月の閑散期を乗り切る計画を立てたりすることもできます。

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自社の毎月の試算表などの数字はとても便利ですが、けっして万能ではありません。

数字に頼りすぎることで生まれるリスクも知っておいてください。

① 短期的な数字に囚われやすくなる

目先の利益や売上を良く見せようとするあまり、将来に向けた大事な投資(修繕やいずれ支払わなければならない出費)を削ってしまうリスクがあります。

この「良く見せよう」という意識が働いてしまうと、事実の「数字」から導き出した「目標の数字」が、「目標からズレた数字」になってしまう可能性があります。

【宿泊業(ペンション・旅館)の具体例】

「今期の当期利益(数字)をどうしても良く見せたい」という理由だけで、客室のエアコンの清傷やお風呂のボイラーの定期点検、老朽化した壁紙の張り替えなどのメンテナンス費用をすべてカットしてしまったとします。

その年の経費は浮くため、一時的に「数字」は良く見えます。

しかし、翌年以降にエアコンから異臭がしたりお湯が出なくなったりして大クレームに繋がり、かえって大きな損失を出す原因になってしまいます。

お客様を快くお迎えしたいという気持ちは変わっていないのですが、目の前の数字(短期的な数字)を意識してしまうが故の判断になってしまった典型的な例です。

② 数字に表れにくい「定性的な価値」を見落とす

事業には、お客様の満足度や、スタッフのモチベーションといった「数字に表しにくいけれど、極めて重要な要素」があります。

これを見落としてしまう危険があります。

事業には様々な要素が関連していますが、絶妙なバランスで整っている事の方が珍しいです。

接客をするのも、料理を作るのも、おもてなしをするのも、仕事をするのも、全て自分を含めたスタッフです。

【飲食店の具体例】

お店の売上(数字)だけを見て「今月も順調だ」と喜んでいました。

しかし、実は現場ではスタッフがギリギリの人数で過酷に働いており、接客態度が悪化しいました。

お客様からは「もう二度と行かない」と不満が溜まっていた…というケースです。

数字だけに頼っていると、この「嵐の前の静けさ(お客様が無言で静かに離れていっている状況)」に気づくことができません。

用語解説

定性的(ていせいてき)
数値や量では表現しにくい、顧客の満足度、スタッフの働きやすさ、信頼性などの「質」に関する要素のこと。
(対義語は、数値で表せる「定量的な(ていりょうてき)」)

③ 誤ったデータの解釈や、操作された数字による意思決定リスク

入力ミスによる計算間違い(ヒューマンエラー)や、誰かが意図的に「見栄えを良くした数字(偽計行為)」をそのまま信じてしまうと、自社の舵取りを大きく誤ります。

間違ったデータを信じたまま下す決断は、当然そのまま間違った決断になります。

これは負の連鎖で、事業を予想もしない危険な方向へ迷い込ませる原因になりかねません。

【飲食店の具体例】

売上集計ソフトへの入力ミスや計算式のずれが原因(1桁多い間違いなど)で、実際は赤字なのに「今月は50万円の黒字だ」とデータが表示されていたとします。

それを信じた経営者が、不要な厨房機器を新しくリース契約してしまい、後から実は手元の資金がショート寸前だったことに気づく…というような事態は、絶対に避けたいものです。

「数字」は、車でいう「カーナビ」のようなものです。

目的地までの最短ルートや現在の状況を教えてくれる、非常に便利な道具です。

しかし、実際にハンドルを握り、目の前の急な飛び出し(現場のトラブルやお客様の細かな変化)を察知してブレーキを踏むのは、運転手のあなた自身です。

「数字(定量)」を正確に使いこなしながら、同時に「現場のリアル(定性)」に耳を傾け、丁寧に看る。

この両輪のバランスこそが、事業において、お客様(得意先)に愛されながら、持続可能で強い経営を続けるための秘訣になるのではないでしょうか。

皆さんもぜひ、「数字」と「現場」の両方を丁寧に優しく見つめ直してみませんか?

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

古賀 聡

広島県広島市の税理士。現在は、個人事業主・中小事業者(法人)の税務・経営の相談を中心に活動中。ブログ投稿を2020年10月1日に立ち上げ、税務・会計だけでなく、Excelマクロなどのアプリを使って業務の効率化や経営のちょっとしたコツなど、「小さな便利」記事を作成・投稿中。

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