少子化対策を税制面から考える:具体的な効果と課題
中国税理士会では、「令和7年度税制改正の建議書について」という研修がありました。これは、誤解を恐れずに分かりやすく言うと、税理士会に所属する各税理士の意見をまとめて、来年(令和7年)の税制について考え方や仕組みを改正してくださいという要望になります。
その中でも、将来、人口が減少していくことが明確な状態で、第1の重要建議項目として「少子化対策について税制面で検討を行うこと」が入っています。私個人も危惧してやまない懸念材料です。
できれば、この記事を拝見して頂いている方と、情報共有したいと思い、書いてみました。この命題については賛否の考え方もありますが、ここからは、私個人の考え方になります。
専門用語や文字ばかりになりますが、最後までご覧いただけたら幸いです。
よろしくお願い致します。
<目次>
スポンサーリンク
建議項目1:年少扶養親族や高校生世代の扶養親族に係る所得控除と給付等との重複適用化
年少扶養親族や高校生世代の扶養親族に対する所得控除と給付の重複適用は、少子化対策において重要なステップではないでしょうか。
この制度は、子育て世帯の経済的負担を軽減し、家計の安定を図るための重要な影響を与えます。
現行制度では、年少扶養親族(所得税で、16歳未満の扶養控除)や高校生世代の子供(給付対象となり年齢は各市町村で異なります。)を持つ家庭に対して所得控除が行われていますが、給付と控除の両方を同時に受けることはできません。
しかし、扶養親族に対する負担が増加している現状では、控除と給付の重複適用があっても良いのでは?
これにより、少しでも家庭の所得税の負担が少なくなり、給付金も受けることができ、家計の負担が軽減されることが期待されます。
例えば、所得控除と給付が同時に適用されることで、子供の教育費や生活費を賄うための負担が大幅に軽減されます。また、特に高校生世代は教育費が急増する時期であり、この重複適用により、多くの家庭が救われるということです。
年少扶養親族や高校生世代に係る所得控除と給付の重複適用は、家庭の負担を軽減し、子育てを促進するための有力な手段だと言えます。
建議項目2: 配偶者の就業調整を減少させるための更なる検討
配偶者の就業調整を減少させるためには、税制面での更なる見直しが必要だとかんがえます。
昔から言われていますが、103万円の壁などの制度が就業意欲を低下させている現状があります。
現行の配偶者控除制度では、一定の所得以上を得ると税控除が減少するため、多くの配偶者が就業時間を制限し、仕事への参加が限定的になっています。
これが家庭全体の収入増加を妨げに繋がっていると言われています。
コンビニエンスストアや飲食店などのパートさんを例にとると、配偶者控除の範囲内に収入の金額を抑えたいという方が、まだまだ多く見受けられます。
仮に、パートさんに特別なスキルや能力があったり、職場の雰囲気をバランスよく調整してくれるような人材であったとしても、収入金額を抑えたいと考えています。
なぜなら、配偶者が103万円の壁を超える収入を得ることで、控除が減少し、結果として収入の増加が抑制されてしまうケースが多くあります。
これを解消するためには、税制の抜本的な改革が必要であり、就業調整を減少させ、労働市場への参加を促進することが重要です。
配偶者の就業調整を減少させるための税制改革は、それぞれのご家庭の家計向上と労働人口減少をできるだけ遅らせること(回復は難しいですが)につながる気がします。
スポンサーリンク
建議項目3: 不妊治療や出産費用等に係る医療費控除の拡充
不妊治療や出産に関わる医療費控除の拡充は、少子化対策にも影響する施策です。
子供を持つことを希望する多くの夫婦にとって、金銭的なハードルが低減される可能性があります。
近年の不妊治療や出産費用は非常に高額であり、これが多くの家庭にとって負担となっています。
医療費控除が拡充されることで、これらの費用が軽減され、子供を持つための環境がに貢献できます。
特に、不妊治療は長期間にわたる治療を要するため、持続的な支援が必要です。
例えば、不妊治療にかかる治療費の全額が控除対象となれば、子供を持つことを希望する夫婦にとって大きな助けとなります。
また、出産にかかる入院費やその他の医療費も控除されることで、家計の負担が軽減され、安心して出産を迎えることができます。
不妊治療や出産費用に対する医療費控除の拡充は、少子化対策として有効ですし、同時に家庭にとっても大きな支援となります。
建議項目4: 教育費支出に係る税制支援
教育費支出に対する税制支援の強化は、少子化対策の一環として確実に有効です。
教育費が家庭の大きな負担となっている現状では、税制による支援が必須だと考えます。
教育費は家庭にとって最大の支出の一つであり、特に私立学校や塾、習い事などの費用は結構負担になりものです。
これに対する税制支援があれば、家庭の負担が軽減され、より多くの家庭が複数の子供を持つことに前向きになれるかもしれません。
例えば、教育費が一定額控除される仕組みが導入されれば、家庭の経済的安定が向上します。
また、習い事や塾の費用も控除対象とすることで、子供の教育環境が改善されると考えられます。
学校に支払う費用は各市町村の条例にもあり、現時点で東京都の場合は高校生(公私ともに)まで無償化になっています。このような地域格差の是正をする意味でも、全国的な取り組みが必要だと感じます。
教育費支出に対する税制支援は、家庭の負担を軽減し、少子化問題に対する有力な解決策となるでしょう。
まとめ
少子化対策における税制面での支援は、経済的な負担を軽減し、子供を育てやすい社会を実現するために欠かせない要素。
所得控除の重複適用や配偶者控除の見直し、医療費控除の拡充など、各種施策の導入が期待したいところです。
税制支援が強化されることで、家庭の経済的な安定が図られ、将来の人口減少に対する歯止めとなるでしょう(回復には更なる支援策が必要かもしれませんが)。
これにより、子供を持つことを希望する家庭が増加し、少子化問題への対応が進むことを期待したいです。
少子化対策としての税制面の支援は、今後の日本社会の未来を見据えた重要な施策です。
最後まで、ご覧いただき、本当にありがとうございました。
スポンサーリンク
★ ★ ★
投稿者プロフィール
古賀 聡
広島県広島市の税理士。現在は、個人事業主・中小事業者(法人)の税務・経営の相談を中心に活動中。ブログ投稿を2020年10月1日に立ち上げ、税務・会計だけでなく、ExcelマクロやRPAを使って業務の効率化やWebサイトの構築など、「小さな便利」記事を毎週月曜日に作成・投稿中。
人気ブログ投稿
お問い合わせ・ご相談は、
お問い合わせフォームにて受け付けております。
お問い合わせフォームの受付は
24時間受付中です。
まずは、気軽に
ご相談・お問い合わせください!