独立開業:創業融資の面談ガイド 理解してもらう押さえておく6つのポイント

創業融資の面談は、あなたの将来のビジネスに確実に影響を与えます。そして、金融機関の担当者は、事業の実現可能性や経営者としての適性を慎重に見極めてきます。そのため、適切な準備と的確な回答が求められます。
同時に、これから独立開業する事業を、客観的に俯瞰するという意味でも、じっくりと考えておく良いステップでもあります。

本記事では、融資面談でよく聞かれる質問と、それに対する回答方法を詳しく解説します。
面談のポイントを6つに絞り、これらの質問に具体的かつ順序立てて答えることで、金融機関の担当者の信頼を獲得し、融資の成功率を高めることができます。

創業融資の面談では、金融機関の担当者はあなたの経営者としての適性と、ビジネスの成功可能性を総合的に判断します。担当者にもよりますが、時には雑談も交えながら、主に以下の6つの観点から質問がされることが多いです。

創業融資における面談の全体像:6つのポイント

  • 経歴
  • ビジネスモデル
  • 自己資金
  • 借入状況
  • 競争優位性(強み)
  • 収支予測と根拠

それぞれの質問内容と効果的な回答方法を見ていきましょう。

【参考:あなたにおすすめのブログ記事】

創業融資を受けるために必要な創業計画書については、前回の下記ブログ記事にて分かりやすく説明しています。こちらのブログ記事とセットで読んでいただけると、より理解が深まりますので、よろしければご覧いただければと思います。

この質問で担当者は、あなたが経営者として事業を継続できる素質を持っているか、そして過去の経験が独立開業するビジネスにどう活かせるかを判断しようとしています。

回答のポイント
  • 具体的な年数と共に職歴を説明する(例:「飲食業界で10年間、店長として5年の経験があります」)
  • 今回始めるビジネスとの関連性を明確に示す
  • 経営に関わるスキル(人材管理、マーケティング、財務管理など)を具体的に挙げる
  • 数字で表せる成果(「売上20%増加」「顧客満足度15%改善」など)があれば積極的に伝える

ここでは、今までの経験を分かりやすく説明するのがコツなので、「自分自身の棚卸」をおすすめしています。今までの事業に関する経験を振り返るという意味もありますので、よろしければ、こちらもご覧いただければと思います。

この質問では、あなたのビジネスの具体的な内容(事業として提供する内容)と、そのことについての実現可能性について尋ねられます。

回答のポイント
  • 「誰に」「何を」「どのように」売るのかを簡潔に説明する
  • 専門用語は避け、融資担当者にも理解できる言葉で説明する
  • 市場ニーズと、それに対するあなたの解決策を明確に述べる
  • 収益の仕組み(価格設定、利益率など)を具体的に説明する
  • 競合との違いを明確に示す

例えば、「30〜40代の共働き家庭向けに、時短できる健康的な冷凍惣菜を提供します。オンラインで注文を受け、定期配送する定額制料金のビジネスです。市販の冷凍食品と違い、添加物を使わず栄養バランスを重視している点が特徴です」といったような感じです。

上記の例を分解してみると・・・

誰に対してか(30〜40代の共働き家庭向け)
どのようなものを販売するのか(時短できる健康的な冷凍惣菜)
どのような受注方法か(オンラインで注文)
どのような価格設定か(定期配送する定額制料金)
他者の違いは何か(添加物を使わず栄養バランスを重視)

など、簡単ですが、事業を説明する必要な内容が網羅されています。

この質問では、あなたの資金管理能力と事業への真剣度が評価されます。

金融機関なので、資金にに関する質問は必ずあります。当然ですが、貸した金額を返済してもらうために、事業基盤となる自己資金については突っ込んで質問されます。

回答のポイント
  • 預金通帳やオンラインバンキングの記録など、客観的な証拠を示す
  • 資金をどのように貯めてきたかの経緯を説明する
  • 自己資金の使途計画を明確に示す
  • 不動産や有価証券など、他の資産についても提示する

例えば、「創業資金として500万円を用意しました。これは前職で8年間かけて計画的に貯蓄したものです。この資金は初期の設備投資300万円と、運転資金200万円に充てる予定です」といった感じです。

金融機関にもよるのですが、自己資金を貯めて行った過程を確認するために、預金通帳を見る場合もあります。
最近ではコンプライアンス(法令遵守)の観点から、「不自然なお金の流れではない」ことが説明できるようにしておくと更に良いです。

この質問では、あなたの返済能力と誠実さが評価されます。

この点は、感覚的な部分なので、金融機関の担当者にもよるのですが、「借りたものは返す」という感覚があるかどうかを判断されます。

住宅ローンや毎月のクレジットカードの支払など、収入と支出のバランスの意識を持っているかどうかなども含まれてきます。

回答のポイント
  • すべての借入(住宅ローン、自動車ローン、カードローンなど)を正直に開示する
  • 返済状況が良好であることを強調する
  • 毎月の返済額と収入のバランスを説明する
  • 高金利の借入(カードローンなど)は事前に整理しておくことが望ましい

例えば「現在、住宅ローンが残高2,000万円あり、月々の返済額は8万円です。返済は滞りなく行っており、家計の収支バランスを考慮しても、新たな事業ローン(今回の創業融資という意味)の返済も十分可能だと考えています」といった具合です。

この質問では、ビジネスの競争優位性と持続可能性が評価されます。

他者(他社)と違う点という「差別化」が認識しているかどうかや、この「差別化」を具体的にどのようにビジネスに取り入れるかといった内容について質問されます。

回答のポイント
  • 競合他社と比較した具体的な強みを挙げる
  • 数字や客観的な事実で強みを裏付ける
  • 顧客にとっての価値を明確に説明する
  • 自分の経験やスキルとビジネスの強みを結びつける

例えば、「当店の強みは、地域内唯一の有機食材専門レストランであることです。地元農家10軒と直接契約を結び、競合店より15〜20%安く新鮮な食材を仕入れられます。また、私自身が栄養士の資格を持ち、健康志向の顧客に最適なメニュー提案ができます」といった感じです。

また、店の内装の雰囲気で、ターゲットの顧客を明確にしたり、提供する料理やサービスについて工夫していることなども一緒に説明すると、より具体的で理解してもらいやすくなります。

特に、一般的に知られていないビジネスや、特殊な業界などは、説明するのが難しい点があるかもしれませんが、専門用語などはできるだけ使わず、例を交えて回答すると、金融機関の担当者の理解を得られます。

この質問では、あなたのビジネス計画の現実性と緻密さが評価されます。

この質問に対する回答は、非常に重要になってきます。なぜなら、上記の①から⑤まで説明した内容を数字で説明する場面になるからです。

①から⑤まででも、多少数字で説明しています。それを更に突っ込んで、具体的で現実的な数字で、それぞれの内容が関連している(連携している、影響している)ことを説明します。

事業を継続していく上で、「会社の事業内容を数字で語る」ことができるようになっていると、今後の事業を展開でも堅実で成長が見込める経営ができるからです。将来の自分自身の事業のためにもぜひ取り組んでみて下さい。

回答のポイント
  • 売上予測の具体的な根拠(市場調査、競合分析、テストマーケティング結果など)を示す
  • 想定客単価と客数、頻度などの計算根拠を明確に説明する
  • 経費の内訳を詳細に示す
  • オンラインビジネスの場合は、フォロワー数や過去の反応率などの具体的なデータを示す
  • 最悪のケース、標準的なケース、理想的なケースなど複数のシナリオを用意しておく

例えば「1日の来客数は、立地条件が似ている競合店の平均が40人であることから、開業当初は60%の24人と見込んでいます。客単価は試食会での注文内容から1,800円と設定。月間の売上は、24人×1,800円×30日=約130万円と予測しています。経費は、家賃15万円、人件費40万円...」といった感じになります。

ビジネスの内容と、その根拠となる数字を組み合わせることで、創業計画書の信憑性がグッと増してきます。また、自身の事業を成長・安定させるためにも、この質問に対し明確・明瞭に回答できるようにして下さい。

創業融資の面談では、金融機関の担当者はあなたの経営者としての資質と、ビジネスの成功可能性を総合的に判断します。上記の6つのポイントについて、具体的かつ客観的な数字の根拠を示しながら、自信を持って説明できるよう準備してみて下さい。

ポイントは以下の3つです。

  1. 具体性 - 抽象的な表現ではなく、数字や実例を交えて具体的に説明する
  2. 客観性 - 感覚的な判断ではなく、市場調査や過去の実績など客観的な根拠を示す
  3. 一貫性 - 経歴、ビジネスモデル、収支予測などに一貫性を持たせる

十分な準備をして面談に臨めば、融資獲得の可能性は大きく高まります。

最後まで、ご覧いただき、ありがとうございました。


投稿者プロフィール

古賀 聡

広島県広島市の税理士。現在は、個人事業主・中小事業者(法人)の税務・経営の相談を中心に活動中。ブログ投稿を2020年10月1日に立ち上げ、税務・会計だけでなく、ExcelマクロやRPAを使って業務の効率化やWebサイトの構築など、「小さな便利」記事を毎週月曜日に作成・投稿中。

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