暖かい想いが循環する持続可能なサプライチェーンマネージメント〜「みらいチケット」が示す素晴らしい経営デザイン〜

突然ですが、YouTubeショート動画で話題となっている「日本一暖かいカレー屋」をご存知でしょうか?
ここでは、大人が自分の食事代とは別に200円(当時時点)で「みらいチケット」を購入し、お店のボードに貼っておきます。
すると、お金を持ち合わせていない子どもたちがそのチケットを使って、無料で暖かいカレーを食べることができるのという仕組みです。
一見すると、お店が身を削ってサービスしているボランティア(赤字事業)のように思えるこの取り組み。
しかし、その背景には、非常に新しく温かい「サプライチェーンマネジメント」と、極めて合理的なビジネスモデルが構築されています。
今回は、なぜビジネスとして持続可能なのかを、できるだけ分かりやすく解説していきます。
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未来へつながる「循環型」サプライチェーンマネージメント

まずは、このYouTubeショート動画を掲載しておきます。
そして、冒頭でも触れている「サプライチェーンマネージメント」について、簡単に掘り下げてみます。
用語解説:
サプライチェーンマネジメントとは?
飲食店では、食材(原材料)が調達され、料理(商品)が作られ、最終的にお客様に届くまでの一連の流れのことです。
この流れを効率よく、かつ無駄なく管理し、ベストタイミングで提供する、仕組みや技術のことです。
通常は「会社からお客様(消費者)への一方通行の流れ」を指します。
一般的なビジネスにおけるサプライチェーンマネージメントは、「原材料の調達(食材を仕入れる) ➔ 製造(食材を調理して作る) ➔ 流通(購入できる状態にする) ➔ 消費者(お客様の購入する)」という、直線的でお金とモノが一方通行に流れる構造です。
しかし、このカレー屋さんのシステムは、「温かい想い」と「未来」が循環するサプライチェーンマネージメントとなっています。
この仕組みについて、つながっている要素は、大きく分けて以下の4つになります。
- ① 資金・原材料の調達(サポーター)
【大人の来店客(資金・想いの供給手)】
<200円の寄付とチケット化>
最初の起点となるのは、お店を訪れる一般のお客様です。
自分がカレーを食べた会計の際、プラス200円を支払って「みらいチケット」を購入します。
これが、子どもたちへ向けた「無料カレー」の原資として調達される段階です。

- ② 製造・プラットフォーム(ハブ)
【カレー店(製造・管理のプラットフォーム)】
<チケットによる商品を管理>
お店は、単にカレーを作る(製造する)だけでなく、一般のお客様から預かった温かい想い(資金)をチケットという形に変えます。
そして、そのチケットをホワイトボードに掲示し、管理する「ハブ(起点となる場所)」の役割を果たしています。

- ③ 流通・消費:(お金を持ち合わせていない子どもたち)
【子どもたち(現時点の消費者)】
<チケットを使用して、商品を消費>
お腹を空かせた子どもたちがお店にやってきます。
ボードからチケット「みらいチケット」を1枚取ってお店のスタッフに渡すことで、暖かいカレー(商品)を受け取ります。
ここでカレー(商品)の提供は完了します。

- ④ 時間を超えた「つながり」の完成
【大人の来店客(新たな資金の供給手へ)】
<恩送りの循環>
このサプライチェーンマネージメントの最も素晴らしい特徴がこの部分にあります。
数年〜十数年という時間をかけて「かつて『みらいチケット』でカレーを食べた子どもたちが、次の世代を支えるお客様(供給側)になる」という点です。

「子どもたちが食べて終わり(消費して終了)」ではなく、彼らが大人になったときに再びこの循環に加わることで、最初の起点へとつながり直します(上記の④から①につながる)。
これは、経済的な価値だけでなく、「恩送りの精神」が途切れることなく回り続ける、素晴らしい発想の持続可能なサプライチェーンと言えます。
なぜ 200円 で持続できるのか?経営面の裏付け

では、この素晴らしい仕組みは、経営や会計の観点から見て本当に持続可能なのでしょうか。
「お店が無理をしているのではないか」と心配になりますよね。
実は、お店のコスト面では負担にならない理由が、お店の営業スタイルや仕組みを紐解くと見えてきます。
① 200円で赤字にならない「売上と原価」の仕組み

会計の視点で最も重要なのは、カレー1杯にかかる「原価(材料費)」です。
カレーは一度に大量に煮込むことで、1杯あたりの食材原価を極限まで下げやすいメニューだと言われています。
一般的な飲食店の原価率は、こだわりやトッピングなどで食材の原価はかなり変わります。
子ども用カレーの食材原価は、通常サイズよりボリュームが控えめであることや、具材の工夫により、1杯あたり200円未満に抑えることが可能です。
つまり、お客様から受け取る「200円」というチケット代は、家賃や人件費といったお店全体の維持費をすべて賄うには足りませんが、カレー1杯を作るために直接必要な「原価(食材費など)」は確実にまかなえているのです。
この手元に残るお金が必ずマイナスにならない限り、「いくら提供しても赤字(持ち出し)にならない」ということになります。
お店は身を削っている(お金を持ち出している)のではなく、お客様が支払った「みらいチケット」の200円の中で、材料費を賄えています。
但し、手間・暇・時間という店主の労力は、この金額の中には含まれていません。
この「労力」が店主の「想い」によってまかなえているのかもしれません。
用語解説:売上(うりあげ)と原価(げんか)とは?
売上とは、商品を販売してお客様から直接いただく代金のことです。
この仕組みでは、お客様が支払う「200円」が売上にあたります。
原価とは、その商品(カレー)を1杯作るために直接必要となる「お肉や野菜、お米などの食材費」のことです。
② 店舗の集客時間と子どもたちがやってくる時間帯の「ズレ」の有効活用

この仕組みがお店の負担にならないもう一つの大きな理由は、一般のお客様がたくさん来る時間帯(約11時30分~約14時00分)と、子どもたちがやってくる時間帯(学校が終わった帰宅時間:15:00〜17:00頃)がうまく「ズレ」ている点にあります。
ピーク時の営業を邪魔しない
飲食店の主な集客時間(ピークタイム)は、お昼の「ランチタイム(11:30〜14:00)」と、夜の「ディナータイム(18:00〜21:00)」です。
この時間はスタッフも大忙しで、席もすぐに満席になってしまいます。
隙間(アイドリングタイム)の活用
一方で、学校を終えた子どもたちがお店にやってくるのは夕方の時間帯(15:00〜17:00頃)です。
この時間帯は一般のお客様が最も少なく、お店にとっては「手が空いている時間」にあたります。
追加のコストが発生しない
お店はすでにお昼から通しで開いており、スタッフもスタンバイしています。
つまり、わざわざこのために新しくお店を開けたりスタッフを呼んだりするわけではありません。
そのため、お店の隙間時間を有効に使って、追加の費用をかけずに、子どもたちを温かく迎え入れることができるます。
用語解説:アイドリングタイムとは?
飲食店などで、ランチタイムとディナータイムの合間などの「お客様が少なく、スタッフや設備に余裕(暇)がある時間帯」を指します。
この時間帯は、お店を開けているだけで発生するコスト(家賃や人件費)に対して売上が立たないため、どう有効活用するかが経営の鍵となります。
まとめ:あなたのお店でも、始めてみませんか?

子どもたちの未来をお腹から支え、地域全体に温かい循環を生み出す「みらいチケット」。
一見すると、お店の持ち出しによる「ボランティア」のようにも思えるこの取り組みですが、経営や会計の視点から紐解くと、実は「原価を回収し、お客さんが少ない隙間時間を有効活用する」という、合理的で持続可能なビジネスモデルが確立されていることが分かります。
「善意」や「温かい想い」を単なる気持ちで終わらせず、経営や会計で分解し理解して、お店を成立させる仕組みに落とし込む。
つまり、誰も損をせず、全員が幸せになるこの「三方よし」のビジネスモデルは、やり方次第でどのような飲食店・地域でも成立させることが可能なのかもしれません。
私には、このような暖かい料理を提供する技術や場所を持ち合わせていないので、この素晴らしいビジネスモデルを構築できませんが、地域のお祭りなどの行事に、わずかばかりですがご協力させて頂いています。
まずは、小さなことでもいいので、できることから始めるというコトは重要だと考えます。
地域の未来を育て、あなたのビジネスを継続できる状態にするために、この温かく強い仕組みを、あなたの事業でも一歩、始めてみませんか?
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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投稿者プロフィール
古賀 聡
広島県広島市の税理士。現在は、個人事業主・中小事業者(法人)の税務・経営の相談を中心に活動中。ブログ投稿を2020年10月1日に立ち上げ、税務・会計だけでなく、Excelマクロなどのアプリを使って業務の効率化や経営のちょっとしたコツなど、「小さな便利」記事を作成・投稿中。








