「記憶」より「記録」:スマホを最強の「外部脳」にするメモ活用術

私たちは日々、仕事や生活の中で無数の情報に触れ、時には素晴らしいアイデアを思いつきます。

しかし、それらの多くは形になる前に消え去ってしまいます。

多くの人は「いつか思い出せるだろう」と考えますが、専門的な見地から見ると、これは大きな間違いのようです。

せっかくのアイデアも、忘れてしまえば「最初から存在しなかったこと」と同じです。

ここでは、「メモを取る」という極めてシンプルな行為が持つ重要性を解き明かしていきます。

そして、常にポケットの中にある「スマートフォン」を最強のメモツールとして使いこなし、他社との差別化や機会損失を防ぐための具体的な実践法を、できるだけ分かりやすく解説します。

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人が何かを「思いつく」瞬間、脳の中では一時的に情報を保持するワーキングメモリ(作業記憶)という領域が働いていると言われているそうです。

しかし、このワーキングメモリの容量は非常に小さく、机のスペースに例えるなら「ポストイット1枚分」程度しかないそうです。

新しい情報が入ってくると、古い情報は容赦なく机から押し出されて消えてしまいます。

用語解説:ワーキングメモリ(作業記憶)とは

ワーキングメモリ(作業記憶)とは、情報を一時的に記憶し、同時に処理する脳の能力です。

よく 「脳の机の広さ」 に例えられ、会話の理解や暗算、計画的な行動などに欠かせません。

一度にキープできる情報量は 3〜4個 と少なく、限界を超えると物忘れやミスに繋がります。

メモを取って脳の外に書き出すことや、マルチタスクを避けて1つずつ集中して処理することが、脳の負担を減らすために有効です。

また、心理学者ヘルマン・エビングハウスの「忘却曲線」というのがあります。

これは、「人間の記憶は時間の経過とともに急速に失われる」という考えを図解で説明した曲線図です。

画像:エビングハウスの実験結果を引用し、忘却曲線を作成しております。

そこから見て取れる内容は簡潔に申し上げると以下の2点になります。

  • 人間の脳は「覚える(保存する)場所」としては非常に不向きである。
  • 脳の本来の強みは「考える(創造する)こと」にある。

脳のワーキングメモリを常にクリアで活動できる状態に保つためには、思いついたアイデアや気づきを「その瞬間にメモを取る」ことで外部に逃がす(記録する)という方法があります。

24時間常に手元にあり、起動まで3秒とかからないスマートフォンは、この「脳のワーキングメモリの解放」を最速で行うための、現代における最高のメモツールになります。

お仕事では、湧き出たアイデアや気づきをその場でメモに記録する習慣がないことは、目に見えない深刻な損失につながります。

逆に、「メモを取る」ことを仕組み化(あるいは習慣化)できれば、それだけで競合に対して圧倒的な優位性を築くキッカケになります。

「機会損失」の防止

ビジネスにおける最大の損失は、「思いつけなかったこと」ではなく、「せっかく思いついたのに、メモを取らずに忘れてしまったこと」です。

機会損失の具体例

営業担当のAさんは、顧客との雑談の中で「最近、若手社員の離職が増えて困っている」という言葉を聞きました。

その後、移動中で「若手向けの研修パッケージを提案したら喜ばれるのでは?」とひらめきました。

しかし、「会社に戻ってから企画書を作ろう」と考え、その場でメモを取りませんでした。

帰社後、突発的なトラブル対応に追われるうちにそのアイデアを完全に忘れてしまい、数ヶ月後、競合他社がまさにその研修パッケージを提案して成約に至ったことを知りました。

上記の具体例は、極端な例かもしれませんが、似たような例など、実際にお仕事をしている場面では頻繁に出くわすのではないでしょうか?

仮に、Aさんが、移動中にひらめいた瞬間にスマホのメモアプリを開き、「〇〇社:若手研修パッケージ提案」と10秒でメモを取ってさえいれば、大きなビジネスチャンスを掴めていたはずです。

「メモを取る」というわずか数秒の労力を惜しむことが、これほど大きな「機会損失」を実態として生み出しています。

圧倒的な他社・競合との「差別化」

インターネットが発達した現代、Googleで検索して出てくるような情報(2次情報)は価値が低くなってしまいます。

なぜなら、競合他社も全く同じ情報にアクセスできるからです。

他社との差別化を生むのは、あなたが街を歩いているとき、あるいは現場で顧客と接したときに感じた違和感、独自の工夫、あるいは直接聞いた生の声といった「1次情報」です。

この1次情報は「その瞬間にメモ(記録)し、二度と手に入らない独自の資産」となってきます。

スマホが活きる1次情報のメモ(記録)の具体例

  • 街で見かけた、大行列ができている店舗のディスプレイを「写真」に撮ってメモに残す。
  • 顧客がポロッと漏らした本音や業界の噂を、忘れる前に「音声入力」でメモする。

日常の些細な気づきをその場から逃さずにメモし、ストックしておく。

そうすることで、他社がインターネット検索では絶対に辿り着けない「独自の顧客理解」と「提案の切り口」が生まれてくる可能性が高まります。

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「メモを取る」ことの重要性を理解したら、次はそのメモを100%成果に結びつけるための効率的な書き方を身につけてみませんか?

スマホの特性(写真撮影・音声入力・縦スクロール)を最大限に活かした「縦型3ステップ(事実 ➔ 解釈 ➔ 行動)」のメモ書き術をオススメしています。

スマートフォンのメモアプリ(使い慣れているアプリで良いです)を開き、1つのメモの中に以下の3つの要素を上から順に書き込みます。

スマホメモの基本構成(テンプレート)

  • 写真、または事実のテキスト(Fact)】
    目に見えた客観的な事実、一次情報
    (その場で即座にメモ)
  • 気づき(Insight)】
    なぜそうなっているのか?
    (スキマ時間にメモを追記)
  • 行動(Action)】
    自分(自社)は何をするか?
    (タスクとしてメモに残す)

【具体例】個人飲食店の店主が、アイデアを得たときのメモ

あなたが個人事業主で小さな飲食店を経営しており、休みを利用して話題の繁盛店をリサーチしている際のメモを例に考えてみます。

悪いメモの例(ただの主観的な備忘録)

せっかくその場でメモを取ったにもかかわらず、主観的な感想だけで終わってしまっている「もったいないメモ」の例です。

悪いメモの例

「新宿のバルに視察に行ってきた。ノンアルコールのカクテルがおしゃれで美味しかった。うちでもノンアルメニューを増やしてみたい。」

この上記の例は、メモを取らないよりもましかもしれません。

しかし残念ながら、感想しか残っておらず、後で見返しても具体的なメニュー開発のアクションに繋がりません。

メモの効果を半減させている典型例だと考えます。

良いメモの例(縦型3ステップを適用したメモ)

  • 事実(Fact):一次情報をその場で瞬時に保存するメモ
    • 目の前の状態…(お洒落なノンアルコールドリンクの写真を撮影し、退店後に音声入力で即座にメモ)
    • 感じた情報…「木曜20時の競合バル。満席の店内で、お酒が飲めそうにない20代後半の女性グループのテーブルに、アルコールと同じくらいお洒落な『ハーブと旬のフルーツをたっぷり使ったノンアルコールドリンク(価格○○○円)』が複数並んでいる。飲む前に全員がスマホで写真を撮っている。」
  • 気づき(Insight):「なぜ?」を掘り下げて追記するメモ
    • フッと浮かんだ時の状況…(翌朝の仕込みの合間や、移動中の電車内で、メモに考察を追記)
    • フッと浮かんだ気づきの内容…「お酒を飲まない層も、バル特有の『お洒落なグラスで乾杯する特別な雰囲気』を味わいたい欲求がある。ウーロン茶ではその欲求を満たせない。見た目が華やかで特別感があれば、ノンアルコールでも○○○円以上(アルコールと同等の高単価)を喜んで支払うという発見。」
  • 行動(Action):次の施策へ繋げるためのタスクメモ
    • 素早くメモする…(その場でタスクとしてメモの最下部に書き込む)
    • メモ内容を実行する…「来週月曜までに、自店の看板メニュー『自家製サワー』をベースにした、ノンアルコールの『無農薬レモンと生ミントのクラフトソーダ(予定価格○○○円)』の試作を行う。メニュー表には単に『ノンアル』と書くのではなく、『お酒が飲めない夜の、贅沢ノンアル』とキャッチコピーをつけ、専用のグラスも手配する。お酒を飲まない客層の客単価アップを狙う。」

この「事実 ➔ 気づき ➔ 行動」の3ステップによるメモ術は、恐らく誰でも思い当たる伏しがあると思います。

3ステップによるメモ術ですが、この内の1ステップだけでも、2ステップの組み合わせでも構いません。

これらのステップは、決して、特別な事ではありません

そのため、飲食業に限らず、どのようなビジネスにも応用できます。

私自身もそうですが、スマートフォンをSNSや動画を見て時間を過ごす「消費の道具」として使っている場合が多いです(そうならないように気をつけていますが…)。

しかし、湧き上がるアイデアや目の前の事実を「その場でメモを取る」という習慣を持つだけで、スマホはあなたの脳のパフォーマンスを何倍にも高める「創造の武器」へと変わります。

良くも悪くも「記憶」は不確実なものです。

でも、何かをひらめいたときや、心が動いたとき、目の前に面白い事実が現れたときは、チャンスではないでしょうか?

スマホをすばやく取り出し、3秒で「メモを取る」。

このシンプルな習慣は、あなたのお仕事に確かな成果をもたらすことになると考えています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

古賀 聡

広島県広島市の税理士。現在は、個人事業主・中小事業者(法人)の税務・経営の相談を中心に活動中。ブログ投稿を2020年10月1日に立ち上げ、税務・会計だけでなく、ExcelマクロやRPAを使って業務の効率化やWebサイトの構築など、「小さな便利」記事を毎週月曜日に作成・投稿中。

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