個人事業主:独立開業後の国民健康保険と国民年金の制度の違いを解説
個人事業主として開業すると、会社員時代とは異なり、ご自身で国民健康保険と国民年金に加入し、保険料を納める必要があります。
会社に勤めていた時は、給料から引かれていることが多いため、自分で支払うという感覚がなかなか持てません。
これらの制度は、どちらも私たちの生活を支える重要なものですが、その目的や仕組みは大きく異なります。
ここでは、新規開業された個人事業主の方に向けて、国民健康保険と国民年金の違いについて解説します。

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国民健康保険と国民年金の基本的な違い

国民健康保険と国民年金は、どちらも生活に欠かせない制度です。
この似たような言葉ですが、それぞれの制度は全く別物です。
国民健康保険は医療費の負担を軽減するための仕組み、
国民年金は老後の生活を支えるための制度です。
それぞれの目的、加入対象者、保険料の決まり方、給付内容、運営主体を表にしてみました。
項目 | 国民健康保険 | 国民年金 |
---|---|---|
目的 | 病気やケガの治療費の負担軽減 | 老後の生活費や障害・遺族に対する給付 |
加入対象者 | 自営業者、退職者、無職者など | 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人 |
保険料 | 前年の所得に応じて変動 | 定額(所得に応じて免除・猶予制度あり) |
給付内容 | 医療費の自己負担割合の軽減、出産育児一時金など | 老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金など |
運営主体 | 市区町村 | 日本年金機構(国) |
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国民健康保険について

国民健康保険は、病気やケガをした際に、医療機関での自己負担割合を軽減してくれる医療保険制度です。
個人事業主の職場で健康保険に加入していない方、自営業者やフリーランス、退職者、無職者が加入対象となります。(現在、会社が法人の場合は、社会保険(厚生年金)が強制加入となっています)
保険料は前年の所得や世帯構成などによって変動し、市区町村ごとに計算方法が異なる場合があります。給付内容としては、年齢や所得によって1~3割の医療費自己負担割合の軽減、高額療養費制度による自己負担額の払い戻し、出産育児一時金などがあります。
注意すべき点として、国民健康保険は病気やケガの治療費を補助する制度であり、死亡や障害に対する保障はありません。また、保険料の支払いが滞ると、給付が受けられなくなる場合があるため、定期的な納付が重要です。
- 加入対象者
- 個人事業主の職場で健康保険に加入していない人
- 自営業者、フリーランス
- 退職者
- 無職者
- 保険料
- 前年の所得や世帯構成などによって保険料が変動します。
- 市区町村ごとに保険料の計算方法が異なる場合があります。
- 給付内容
- 医療費の自己負担割合の軽減(年齢や所得によって1~3割)。
- 高額療養費制度(自己負担額が高額になった場合に払い戻しを受けられる制度)。
- 出産育児一時金(出産時に支給される一時金)など。
- 注意点
- 国民健康保険は、病気やケガの治療費を補助する制度であり、死亡や障害に対する保障はありません。
- 保険料の支払いが滞ると、給付が受けられなくなる場合があります。
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国民年金について

国民年金は、老後の生活費や、病気やケガで障害が残った場合、または加入者が死亡した場合に、年金や一時金が支給される公的年金制度です。
日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人(自営業者、フリーランスを含む)が加入対象です(但し、20歳以上の大学生の場合でも加入対象ですが、免除の制度が設けられています)。
保険料は定額で、令和7年度の時点では約月額17千円弱となっています。所得が低い場合は、保険料の免除や猶予制度を利用できますので、無理して支払って、家庭の資金繰りが上手くいかないようにならないように、正規の手続きを踏むことが大切です。
給付内容としては、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金があります。
国民年金は老後の生活を支えるための重要な制度ですが、将来受け取れる年金額は保険料の納付期間や加入状況によって異なります。
保険料の未納期間があると、将来受け取れる年金額が減額されたり、年金を受け取れなくなる場合があるため注意が必要です。
- 加入対象者
- 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人。
- 自営業者、フリーランスを含む。
- 保険料
- 保険料は定額です。(令和7年度の時点では月額17千円弱)
- 所得が低い場合は、保険料の免除や猶予制度を利用できます。
- 給付内容
- 老齢基礎年金(老後に受け取る年金)。
- 障害基礎年金(病気やケガで障害が残った場合に受け取る年金)。
- 遺族基礎年金(加入者が死亡した場合に遺族が受け取る年金)。
- 注意点
- 国民年金は、老後の生活を支えるための重要な制度ですが、将来受け取れる年金額は、保険料の納付期間や加入状況によって異なります。
- 保険料の未納期間があると、将来受け取れる年金額が減額されたり、年金を受け取れなくなる場合があります。
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個人事業主が注意すべき点

個人事業主として注意すべき点は主に加入手続き、保険料の納付、確定申告の三つがあります。
国民健康保険は開業後、市区町村の窓口で手続きが必要で、国民年金は20歳になったときや会社を退職したときなどに市区町村の窓口または年金事務所で手続きが必要となります。
国民健康保険料と国民年金保険料は、それぞれ納付期限までに納める必要があります。ご自身の家庭の資金繰りが厳しい時期には、保険料の納付が困難になることもありますが、そのような場合は免除や猶予制度を利用することをおすすめします。
最後に、国民健康保険料と国民年金保険料は確定申告で社会保険料控除として所得から控除できるため、確定申告することで税負担を軽減できます。
個人事業主にとって、これらの社会保障制度を理解し適切に活用することは、安定した事業運営と将来の安心につながります。
- 加入手続き
- 国民健康保険は、市区町村の窓口で手続きが必要です。
- 国民年金は、20歳になったときや会社を退職したときなどに、市区町村の窓口で手続きが必要です。
- 保険料の納付
- 国民健康保険料と国民年金保険料は、それぞれ納付期限までに納める必要があります。
- 保険料の納付が困難な場合は、免除や猶予制度を利用しましょう。
- 確定申告
- 国民健康保険料と国民年金保険料は、確定申告で社会保険料控除として所得から控除できます。
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まとめ
国民健康保険と国民年金は、どちらも私たちの生活を支える重要な制度ですが、その目的や仕組みは大きく異なります。
これらの手続きは会社側が行っていたので、気に留める必要もありませんでしたが、個人事業主として開業した場合、これらの制度を理解し、適切に活用することが大切です。
同時に、せっかく開業した個人事業主として、事業の安定を図っていくためにも、制度の違いや、活用の方法を模索してみて下さい。この記事が、そのキッカケになれば幸いです。
最後まで、ご覧いただき、ありがとうございました。
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投稿者プロフィール
古賀 聡
広島県広島市の税理士。現在は、個人事業主・中小事業者(法人)の税務・経営の相談を中心に活動中。ブログ投稿を2020年10月1日に立ち上げ、税務・会計だけでなく、ExcelマクロやRPAを使って業務の効率化やWebサイトの構築など、「小さな便利」記事を毎週月曜日に作成・投稿中。