Excelで現金出納帳を作成
飲食店や小売店など、日々現金の入出金は
現金出納帳を付けているのではないでしょうか。
ほぼ毎日の作業のため、できるだけ手間・暇・時間がかからない方法で
処理できれば、「店休日」が本当の意味で「休息日」になります。
ノートなどの紙で管理していた現金出納帳をExcelで管理して、
どのように変わったか、実際にどのように管理したらいいのか?を解説します。
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現金出納帳を管理
紙からExcelへ変更
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なぜ紙による帳簿からデータ(Excel)にしたのか
飲食店のお客様のお話です。
このお客様は、事業立ち上げ当初はノートで現金出納帳の帳簿をつけていました。
50歳過ぎてからの独立開業であり、また、料理人として日々技術を磨いていて
パソコンを触ることも職業柄ほとんどありませんでした。
当然、ノートで現金出納帳の帳簿をつけようと考えたわけです。
しかし、日々の売上や仕入れなどの帳面付けは、開業後初めてやる処理のため、
それなりの手間・ひま・時間がかかっていました。
開業当初は、
「お店として今後継続してやっていけるか」という不安もありますので、
常にお店を開けていて、お休み(店休日)が1日もありませんでした。
約3ヶ月が経過した頃、お店が軌道に乗ったと判断できた(安心できた)ので、
お休み(店休日)を設けるようにしました。
そうしないと、ご本人の体調を崩してしまいかねなかったからです。
このお休み(店休日)は、体を休めるための日で、
そういう意味では「休息日」だったはずでした。
しかし、日々の仕事が忙しくなり、せっかくの休みの日に
現金出納帳をつけていらっしゃるという事実を知りました。
「休息日」が「休息」でない状態です。
休みの日は休んでいただきたいと思い、何か方法がないか模索し、
IPadを使って現金出納帳をつけるという方法に切り替えました。
この方法により、現金出納帳を作成する処理の時間は5分から7分ぐらいで、
週末にかけて食材の仕入れが多い時でも10分ぐらいで処理が完了します。
現金出納帳をその日の終わりに処理して、
「休息日」は本当の休息ができるようになりました。
今まで手書きで書いていた時間が、
確実に効率化され短時間で処理が済んだ事例です。
では、実際に、現金出納帳をどのようにノート(紙による記入)からExcelに変更したかを次に説明します。
パソコンでExcelの各種設定を行います。
ここでは、iPadの保存方法や同期の仕方については、
別途ブログ記事にしたいと思います。
タッチペンを使って入力する方法なので、
スマートフォン感覚で入力が完了するので、
パソコンが苦手な人でもスムーズに処理できます。
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紙からExcelデータへ変更(全体像)
まずは、Excelデータの全体像についてご理解して頂き、
次の章で詳細に設定内容を説明いたします。
現在、実際に使用している現金出納帳で、書式の完成形が下記の画像になります。
個人事業主のため、1月から12月までの現金出納帳の入力シートがあります。
日々処理をするのは、この各月のシートです。
縦欄には、
ナンバー(№)、日付、取引先名、各項目の金額、現金残高、備考欄
となっています。
画像では見えませんが、この内容を300行設定しています(№が300まで設定)。
現金出納帳として各月の入力部分は、下の画像のように、
日付、取引先名(リストから選択)、各項目の金額になります。
一番右側にあるのは取引先名のリストを設定したシートで、
入力操作を簡単にするために別シートに設定しています。
(次の章で設定方法を説明します。)
下の画像は、取引先名のシートの中身になります。
取引先名の横には、参考として各勘定科目の名前を設定しています。
この取引先名を各月の入力シートでリスト表示します。
下の画像は、取引先名を入力するためにリスト表示させた状態です。
取引先名を別シートで設定・管理することで、
表示させるリストを、簡単に追加・削除ができるようにしています。
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各部分のExcelの設定(詳細設定)
001:Excelの関数を設定する
まずは、「売上高」「材料仕入高」「消耗品費」「その他」の
項目の下にある合計金額にExcel関数を設定します(①の部分)。
取引金額を入力したら、自動で各項目の合計金額に反映させます。
「売上高」の下の部分には「=SUM(D7:D306)」と設定します。
これは、「売上高」の列(D列)の7行目から306行目まで
入力された金額を集計するという意味です。
同じように、「材料仕入高」の下の部分には「=SUM(E7:E306)」と設定します。
「材料仕入高」の列は「E列」なので、
「売上高」と違って「D」が「E」になっています。
「消耗品費」の下の部分には「=SUM(F7:F306)」、
「その他」の下の部分には「=SUM(G7:G306)」に設定します。
現金の残高の部分(②の部分)も簡単なExcel関数を設定します。
「現金残高」直ぐ下の部分(画像では6万円の部分)は、
月初の実際の現金残高を入力します。
「№」の「1」の行で、「現金残高」の部分(55,000円と表示されているところ)に、
「=H6+D7ーE7ーF7ーG7」(すべて半角)で入力します。
これは、「H6」の月初の「現金残高」に「D7(売上高)」をプラスし、
「E7(材料仕入高)」と「F7(消耗品費)」と「G7(その他)」を
マイナスするという意味です。
この設定したこの部分(セル)をコピーし、306行まで範囲指定して貼付けます。
7行目から306行目までズレながら(スピル機能)、計算式が設定されます。
002:取引先名のリストを設定(この機能が重要!)
各月の入力シートの取引先のところにリスト表示させるため、
各月シートの取引先名を入力する部分(セル)を選択します。
この部分にExcelの「データの入力規則」という機能を使います。
下の画像のように、「データ」タブ➡「データツール」➡「データの入力規則」➡「データの入力規則(V)」を選択します。
すると、「データの入力規則」の設定画面が表示されます。
「データの入力規則」の設定画面では、
「設定」、「エラーメッセージ」、「日本語入力」のタブを設定します。
まずは、「設定」のタブです(下の画像を参照)。
「設定」のタブ(①の部分)では、
「条件の設定」の「入力値の種類(A)」は「リスト」を選択(②の部分)します。
「空白を無視する(B)」と「ドロップダウン リストから選択する(I)」のチ
ェックボックスをいれます(③の部分)。
こうすることで、表示されるリストからしか選択できません。
リストに無い取引先の場合は、リストに「その他取引先」を設定しているので、
これを選択して使います。
「元の値(S)」には、画像のように「=取引先名!$B$2:$B$54」と入力します。
取引先名だけは全角で入力し、それ以外はすべて半角で入力します。
この設定は、取引先名のシートのB2からB54までを
リストとして選択・表示させるという意味です。
リストの取引先名が増え100事業所になった場合は、B54をB101に変更します。
ここで、Excel関数の「元の値(S)」に入力するそれぞれの意味について、
「=」(イコール)は、キーボードのゼロの横にあります(Excel関数を入れる)。
「!」(ビックリマーク)は、「Shift」を押しながら「1」を押します(シートを指定する機能)。
「$」(ドルマーク)は、「Shift」を押しながら「4」を押します(Excelの絶対参照という機能)。
「:」(コロン)は、通常「L」の右二つ隣にあります(セルとセルの間をつなげる)。
「:」は「;」(セミコロン)とは違いますので間違えないようにしてください。
次は、「エラー メッセージ」のタブです(⑤の部分)(下の画像を参照)。
「無効なデータが入力されたらエラー メッセージを表示する(S)」の
チェックボックスにチェックを入れます(⑥の部分)。
「スタイル(Y)」は、「▽」からリストを表示させ
「停止」を選択します(⑦の部分)。
最後に、「日本語入力」のタブです(⑧の部分)(下の画像を参照)。
「日本語入力(M)」を「▽」のリストを表示させ
「コントロールなし」を選択します(⑨の部分)。
この設定したこの部分(「C7」のセル)をコピーし、
306行まで範囲指定して貼付けます。
7行目から306行目まで同様の設定が貼り付けられてリスト表示が設定されます。
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ちょっとした工夫で「目標」を意識
各部分のエクセルの設定(詳細設定)では、
わざわざ「売上高」などの各項目の合計金額を集計するという設定をしています。
理由は、 店舗を運営していく1ヶ月の過程で目標(基準)になるからです。
店舗の運営に慣れてくると、1ヶ月当りの売上高や材料仕入高が
感覚的にどのぐらいの数字になるのかを肌感覚で分かってきます。
ここで設定している材料仕入高や消耗品費だけでなく
地代家賃や光熱費など銀行口座から引き落とされる金額も、
同じように肌感覚で分かってきます。
そのため、現時点での売上高の合計が、入力後直ぐに把握できると、
今月が残り何日間あり、どれだけの金額を稼がなければならないか
ということを逆算できます。
また、今月のお客様の動向(来店の状態)の良し悪しも金額で判断できます。
また、材料仕入高と売上高のバランス(概算粗利益(率))も
自動集計から計算され、材料仕入の金額が多くなっていないか
などの確認もすることができます。
仕入が過大になり食材ロスが多くなってしまうと、
概算粗利のパーセンテージが低くなります(悪くなります)。
このように、事業主の肌感覚の金額と実際の帳簿上の数値を把握しながら、
明日以降に役立てることが重要です。
Excelの関数を使って各項目を自動集計し、日々の店舗運営の状況を数字で把握し、
良し悪しに直ぐ対応ができるというのが強みになります。
Exceで設定している内容は、決して難しいことではありません。
しかし、このような ちょっとした工夫をすることで、
現金出納帳という単なる帳簿が、
店舗運営の一つの武器になるのではないでしょうか。
最後まで、ご覧いただき、ありがとうございました。
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投稿者プロフィール
古賀 聡
広島県広島市の税理士。現在は、個人事業主・中小事業者(法人)の税務・経営の相談を中心に活動中。ブログ投稿を2020年10月1日に立ち上げ、税務・会計だけでなく、ExcelマクロやRPAを使って業務の効率化やWebサイトの構築など、「小さな便利」記事を毎週月曜日に作成・投稿中。
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