貸倒れが事業に与える本当の怖さ~金額以上に与える精神的な影響~

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<目次>
貸倒れによる損失は金額だけではない

掛け取引による売上金は、入金されるまでにどうしても日数がかかります。
仮に、売上高が100万円で粗利率が50%の場合、材料費や外注費は50万円になります。
この100万円が貸し倒れになった場合、事業の資金繰りはどうなるでしょうか?
まず、回収できない100万円が確実に損失となります。
さらに、ここでは粗利率が50%なので、材料費や外注費の支払いとして100万円×50%= 50万円が出ていきます。
もし、この50万円を支払わない場合は、仕入先や外注先から取引の信用を失ってしまいかねません。
つまり、実質的な損失は150万円になります。
同上の粗利率50%の場合は、損失の150万円を稼ぐためには、300万円の売上高が必要になります。
貸倒れ損失を埋めるための労力は利益に貢献しない

前述のとおり、貸倒れによる損失を埋めるためには、300万円の売上を上げるための労力が必要です。
しかし、この労力は損失を埋めるためのものであり、利益を生み出すためのものではありません。
つまり、この損失を埋めるための労力は利益に全く貢献しないのです。
さらに、貸倒れが発生すると、精神的にも大きな負担がかかります。
「なぜ入金されないんだ?」「この先どうしよう?」といった不安や焦りが生まれ、事業主の心理状態は不安定になります。
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貸倒れの本当の怖さは精神的な影響

貸倒れの本当の怖さは、金額だけではありません。
精神的な影響により、今まで通りのサービスを提供できなくなる可能性があるということです。(サービスの品質の確保が難しくなります)
実際に、どんな感じかをイメージして頂くために、下記にちょっとしたストーリーを事例として挙げてみました。
貸倒れが起こった時の事例
私の会社は、創業10年の小さなIT企業です。
主な顧客は中小企業のB社(ここでは、売上の取引先)で、システム開発や保守サービスを提供しています。
年間の売上高の内、B社の占める割合は、約70%以上です。
ある時、B社が業績不振に陥り、自社への支払いが滞るようになりました。
私の会社は、B社からの入金がなければ、従業員の給料やオフィスの家賃を支払うことができません。
社長である私は、不安と焦りから時々夜も眠れなくなり、従業員の些細なミスに対してもイライラすることが増えました。
(厳しい時もありましたが何とか乗り越え、事業が安定継続していた時には、このような感情にはならなかったのに・・・。)
そんな対応をしているので、従業員のモチベーションはもちろん低下します。
同時に、顧客への対応も雑になってしまいました。
私は、B社への請求を続けましたが、結局、B社は倒産してしまいました。
自社の100万円の売掛金は回収できなくなり、資金繰りが悪化しました。
さらに、従業員のモチベーション低下による提供しているサービスの品質の低下が、確実に起きてきました。
同様に、顧客対応が悪くなってしまい、既存の顧客も足が遠のき、少しずつ売上が減少してしまいました。
私は、貸倒れによる損失だけでなく、精神的なダメージや信用低下による損失も抱えることになってしまいました。
上記は、システム開発や保守サービスの業種を例に出していますが、建設業でも小売業でもどの業種でも起きてくる内容です。
信用を失うことの重大さ
貸倒れの金額は、金融機関からの融資で一時的に穴埋めできるかもしれません。
例えば、倒産防止共済掛金の加入で備えをしておくこともできます。
しかし、もし品質が低下してしまい、「今まで築いてきた信用」を失ってしまったら、簡単には取り戻せません。
「信用」は、事業を継続する上で最も重要な資産の一つです。
「信用」を失ってしまうと、連動して他のお客様からの信頼も失い、売上が減少してしまう可能性がよくあります。
気持ちをブレさせないことの重要性

貸倒れが発生しても、事業が提供する品質に影響が出ないよう、「気持ちをブレない」で事業を継続することが重要です。
まずは、日頃から資金繰りをしっかりと管理し、貸倒れのリスクを軽減するための対策を講じておく必要があります。
そうは言っても、貸倒れのリスクを管理するには限界もあります。
そのため、もしもの備えとして「倒産防止共済掛金(経営セイフティー共済掛金)」は節税効果にもなるオススメの手段になります。
また、他の方法としては、得意先に定期的に訪問するなど、得意先の状況を意識して確認するというのも手です。
(つまり、「自らの嗅覚(五感)を鍛えておく」ということです。)
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貸倒れを防ぐための対策

貸倒れを防ぐためには、色々あります。
しかし、当てはまらない業種や取引もあります。
まずは、基本を押さえてみて下さい。
- 取引先の信用調査
- 新規取引先とは、取引前に信用調査を行い、支払い能力を確認しましょう。
- 既存の取引先についても、定期的に信用状態を確認しましょう。
- 契約書の作成
- 契約書を作成し、支払い条件や期日を明確化しましょう。
- 遅延損害金や違約金についても定めておきましょう。
- 請求書の発行
- 請求書は期日通りに発行し、支払い状況をマメに確認しましょう。
- 支払いが遅れている場合は、早めに連絡を取りましょう。
- 保証人の設定
- 必要に応じて、連帯保証人を設定してもらいましょう。
- 貸倒引当金の設定
- 貸倒れに備えて、貸倒引当金を積み立てておきましょう。
- 弁護士や税理士への相談
- 貸倒れが発生した場合や、予防策について相談したい場合は、弁護士や税理士に相談しましょう。
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まとめ
貸倒れは、事業に大きな損失を与えるだけでなく、精神的にも大きな影響を与えます。
貸倒れを防ぐためには、日頃から資金繰りをしっかりと管理し、取引先の信用調査や契約書の作成、請求書の発行など、様々な対策を講じておくことが重要です。
万が一、貸倒れが発生してしまった場合は、早めに弁護士などに相談し、適切な対応を取りましょう。
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投稿者プロフィール
古賀 聡
広島県広島市の税理士。現在は、個人事業主・中小事業者(法人)の税務・経営の相談を中心に活動中。ブログ投稿を2020年10月1日に立ち上げ、税務・会計だけでなく、ExcelマクロやRPAを使って業務の効率化やWebサイトの構築など、「小さな便利」記事を毎週月曜日に作成・投稿中。