試算表の貸借対照表の見方(「現預金」を読み解く)
試算表で、現金・普通預金・定期預金などの現預金合計金額のみに絞った、
運転資金の流れを解説したいと思います。
数字が苦手だったり、貸借をあまり得意にされてない方でも、
シンプルな方法なので、ご参考にして頂ければと思います。
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<目次>
【 貸借対照表の見方 】
現金・預金を読み解く
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「<」と「>」だけを使ってみる
「<」「>」、この記号は普段使っていらっしゃいますか?
左側と右側に数字がある場合どちらが大きいかを表示する記号です。
今回はこれだけ使います。
右側に100、左側に800、の場合は「100<800」という具合に、
この記号を使います。
通常、試算表は1ヶ月で区切り作成します。
下の画像のように、試算表には、
前月の繰越残高と、当月貸方、当月借方、そして当月の残高、
の4つの金額が表示されています。(TKCシステムの架空の清掃会社のデモデータです。)
画像:デモデータ 「当座資産計」までの試算表の一部
まずは、
「前月末残高」、「借方」、「貸方」、「当月残高」の4つの金額が
どのような意味なのかを見ていきます。
(会計ソフトにより、「前月末残高」は「前月繰越残高」、「借方」は「当月借方」
と言った表示もあります。)
- 「前月末残高」
月初めに現預金の金額が、会社にいくらあったかを表示するものです。 - 「借方」
1ヶ月の間にどれだけ金額が増えたかを表示するものです。
この金額は、売上(売掛金)の入金などが主です。 - 「貸方」
1ヶ月の間にどれだけ金額が減ったかを表示するものです。
この金額は、会社に関わる様々な経費
(材料・外注・給料・水光熱費など)の支払などが主です。 - 「当月残高」
月末に現預金の金額がいくら残ったかを表示するものです。
この試算表で比較する場所は、「現預金小計」の部分です。
「前月末残高」と「借方」でどちらが大きいか比較します。
「貸方」と「当月残高」でどちらが大きいか比較します。
「<」、「>」の記号を、下の画像のように付けてみました。
画像:現預金小計に「<」「>」を付けた試算表の一部
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ケース①
「前月末残高 > 借方」で「貸方 < 当月残高 」の場合
ケース①「 前月末残高 > 借方、 貸方 < 当月残高 」の場合
上記の画像が、このケースに当てはまります。
この部分だけ見て、この会社が優良なのかどうか、
あるいは、安全なのかどうかが分かりますか?
なんとなく理解されてると思いますが、答えは超優良企業です。
このような試算表のお客様に出会うことは、ほとんどありません。
「前月末残高」と「借方」の比較では、
入金してきた金額よりも前月末残の方が高いということは、
毎月の売上高以上の金額を常に保有しているということが分かります。
「貸方」と「当月残高」の比較では、
会社を維持するため、1ヶ月分の金額を支払った後でも、
現預金の金額が十分残っています。
このことは、仮に売上高がゼロで入金がなくても、
1ヶ月分の支払わなくてはいけない金額を、
十分支払えるだけの残高があるということです。
つまり、このパターンは、運転資金が潤沢であると試算表で判断ができます。
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ケース②
「前月末残高 < 借方」で「貸方 > 当月残高」の場合
この場合は、運転資金を回すだけの残高が月初にないことを表しています。
月末にもその残高がありません。
そのため、
1ヶ月以内に売上げ金額を回収するかどうかということが重要になってきます。
なぜなら、1ヶ月分の支払金額が月初残高にないため、
1ヶ月以内に回収しないと支払金額に追いつかないからです。
このことは、
常に売り上げの金額を回収するということに追われているとも言えかねません。
決して資金繰りがいい状態ではないと言えます。
(※注意)
ただし、複数口座を持っている場合は、預金の振替(口座間の資金移動)があるかもしれません。
この金額は当月借方及び当月貸方から差し引きますので、一概には言えないことに注意してください。
しかし、ほとんどの中小企業は、このケースであったとしても、
うまく運転資金を確保し、事業を継続している方がほとんどだと思います。
個人で貯めている金額を事業に投入したり、
上手に運転資金を確保しながら事業を継続しています。
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ケース③
「前月末残高 < 借方」で「貸方 < 当月残高」の場合
この場合は、月初には残高は少なかったのですが、
当月の入金で売上の金額を回収(入金)し、
1ヶ月の支払をし終わっても、現金預金の残高が残っていることになります。
つまりこの1ヶ月間で、運転資金が良くなっていることを表しています。
右肩上がりに資金の残高が増えているということも言えるので、
運転資金が改善されていると判断ができます。
次月以降の売り上げにもよるのですが、この状態が続くと、
確実に運転資金を確保できるためケース①のような状況になる場合があります。
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ケース④
「前月末残高 > 借方」で「貸方 > 当月残高」の場合
この場合は、月初には十分な現預金残高があったのですが、
回収金額は少なく、支払い金額も多いため、
当月末の現預金残高が減少していることを表しています。
つまり、この1ヶ月間は、運転資金が目減りしているということが分かります。
この状態だと、今後の売上の状況などを把握し、
翌月以降の運転資金を確保するという準備をしなければなりません。
まずは、売上金額を早めに回収します。
それでも運転資金に余裕が無い場合は、ケース②の場合のように、
個人で貯めていた金額を会社に投入することも視野に入れていくということです。
または、メインの金融機関に借入金の申込申請をして、
運転資金を調達する準備も必要になります。
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今後の事業展開と結びつける
試算表は、1ヶ月という期間の区切って、事業全体の動きを把握していくものです。
そのため、試算表には、
今後の事業展開(売上高の増減や支払金額の増減)の内容を含んでいません。
あくまでも、今までの事業の内容だけです。
そのため、前月、前々月はどういう試算表(事業の状態)だったのか、
来月、再来月はどう変化していくのか、ということも考慮に入れると、
今月の試算表は以後どうなっていくのか、ということが理解できます。
重要なのは、
1ヶ月という区切りの試算表を基に、今後の事業展開を読み解いていくことです。
そういう意味では、事業の現状を理解する重要な資料です。
数字が苦手だったり、毎月同じような変わり映えのしない数字の場合もありますが、
是非、数字に慣れていただき、ポイントになる部分を抑えて頂ければと思います。
数字を味方につけると、色々なことが見えてきます。
最後まで、ご覧いただき、ありがとうございます。
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投稿者プロフィール
古賀 聡
広島県広島市の税理士。現在は、個人事業主・中小事業者(法人)の税務・経営の相談を中心に活動中。ブログ投稿を2020年10月1日に立ち上げ、税務・会計だけでなく、ExcelマクロやRPAを使って業務の効率化やWebサイトの構築など、「小さな便利」記事を毎週月曜日に作成・投稿中。
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